雲竜渓谷・雲竜瀑トレッキングツアー

まず最初に御断り。

1.今回は真面目一辺倒。オチも何もありません。
また、いつもの腹黒べー太としての記事でもありません。

2.私自身の移動はやや早めです。
例えば、西ノ湖~赤岩滝まで1時間で歩けます。
  例えば、山岳部でもコースタイムの1.5倍で移動できます。

3.今回は条件に非常に恵まれていました。

これらを念頭に置いてお読みいただければ幸いです。

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先日、少々気になるチラシを、複数見つけた。
いずれも雲竜渓谷・雲竜瀑に関するツアーの参加者募集。
気になったのは時間設定。
ただし、雲竜は自身でも年に一度行く程度の場所である為、まずは現状の確認。

雲竜渓谷は、大谷川の支流の一つ、稲荷川の上流に位置する。

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日光駅から5.5km。林道ゲートが入口。
ここからスタートすることになる。
9:28出発 【00min】

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ゲートから先は許可車両のみしか進入が許されないため、林道ゲート付近には早朝でも車が止まっている。

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以後、舗装された林道を歩く。
今夏、落石が林道を塞いでいたことがあったそうだ。

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稲荷川展望所 10:00 【32min】

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日向砂防堰堤入口 10:07 【39min】
昭文社の地図では、ここまで1時間と記載されている。

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洞門岩到着 10:18 【50min】
この直前、9:00ゲート発の男性二名を追い抜く。
ここで一旦林道を離れ、川沿いのルートへ入る。

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途中、川進入が3回。

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林道の終点。10:40 【72min】
ここでアイゼン着装、先行者からの情報収集など10min。

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友不知。 11:01 【93min】
川侵入3回。

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雲竜瀑到着。 11:12 【104min】

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若干見づらいが、目安。

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山渓の記事になっていたのはこの辺りの写真。
表紙はこの氷の柱の裏側。

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林道の終点から復路。 12:56
雲竜瀑からの時間は往路と同等と仮定し、【20min】
帰路は林道を使用。

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洞門岩。13:24 【48min】

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稲荷川展望台。13:41 【65min】
電話や立ち話で10min

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林道入口帰着。 14:17 【101min】

概算で移動のみ、片道100分 往復200分。

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現状確認を基に、自身でガイドをすると仮定する。

移動時間は自身 ×1.5。
片道150分 往復300分

雲竜瀑直下での昼食・休憩に45分。

1時間の移動毎に10分の休憩とし、×(300/60)回。

アイゼンの着脱5分×2回。

総計405分=6時間45分。

※募集型である以上、参加者のレベルや道具の習熟度不明であり、時間加算。
※遊び時間や撮影など、楽しんでもらう時間は未計上。時間加算。
※道路状況の変化により時間加算。
…加算時間累計として仮に1.5時間を充てる。計8時間15分。

※地形・ツアー終了後の参加者の移動などから、林道入口帰着を14:30と仮定。
…6:15林道入口出発。出発時間不適。
……出発9時と仮定。17:45帰着。帰着時間不適。

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以上はあくまで私の試算ですが、高低差≒550m、距離≒11kmの移動所要時間よりもツアー時間が短い場合は、某かの無理が生じていると考えられます。

今回、洞門岩周辺に車両が止まっていました。
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この洞門岩からの往復であれば、50×2×1.5+αとして3時間程度での往復も可能でしょうが、林道への進入を許されるのは、許可車両のみ。
以前、ビジターセンター勤務であった頃に森林管理署の監視員をしていた事があり、その際巡視を目的としての車両侵入は許されていましたが、そうした一部の例外を除けば、工事車両や関係車両のみが通行を許されるはずです。

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林道入口にも明記されていますし、林道は一般道路とは異なります。
前述のように落石、また雪崩などで道が塞がれる可能性もあり得ます。
奥地に侵入後、そうした状況が発生すれば車両ごと帰れなくなる可能性もあり得ます。
過去に、帰路林道が完全凍結しアイゼンが無ければ歩けないこともありました。
そこまで凍結した場合、車両では停止する事すら厳しいでしょう。
そうしたリスク回避の観点からも、商用利用がなされる事はおそらく無いと思います。

更に、上記算出も実は当てになりません。

冒頭に3として掲げた、【条件に非常に恵まれていた】がその要因です。

恵まれていた条件とは、、A~Cの3つ
A.1/29に雲竜渓谷で救助訓練が行われ、その為洞門岩まで除雪がされていたこと。
B.それ以降好天が続いたようで、全行程の8割程度を占める同区間の大半で乾燥した状態のアスファルトを歩けた事。
C.Bの状態の為、帰路の林道も凍結箇所が殆ど無かったこと。

この区間が除雪されていない場合は4km近くの道のりで雪上を歩くことになり、より時間がかかる事が予想され、また、除雪がなされていても乾燥していない場合、路面が凍結している可能性があります。

地形上から、13時の時点で林道はほぼ日陰に戻る為、再凍結の可能性は高いと思います。(過去2回この状態に遭遇しています)

となれば、最初の仮定となっている移動時間は更に延長されることとなります。

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以上、時間を最大のネックとして、私は雲竜渓谷のツアーを企画することができません。
無理な時間設定をすることは、トムラウシの例を出すまでもなく、安全性に多大な影響を及ぼします。

また、安全の観点から考えれば、
・ 凍結箇所の移動がある為アイゼンが必携であること。(できれば前爪付き)
・ 落石・落氷の可能性がある為、ヘルメットの装着が望ましいこと。
などにも配慮すべきでしょう。

2/4にも、雲竜瀑手前のF1高巻地点で、軽アイゼンを装着したパーティの一人が滑落したり、落石が当たった人もいました。
また、私も崖の崩落・落氷を目撃しています。

山と渓谷社の記事が掲載されたこともあり、興味をお持ちになる方も多い事でしょう。
冬季の雲竜瀑・雲竜渓谷は非常に美しい場所です。
この記事とは別に、またレポートをする予定ですが、実に感動的な場所である事は間違いありません。

ですが、気楽に立ち入るべき場所で無いのも確かです。

一人で行くよりも、ガイドがついた方が安心なのでしょう。
但し、このコースのガイドには前述の通り相当な時間と、ガイド役自体にも相当な経験を要する筈です。
恥ずかしながら、私は不特定の方を対象として、安全にお連れする自信がありません。
参加予定のツアーに疑問があるなら、納得いくまでガイド役に確認をしてください。
ツアーが企画されている以上、私など比較にならないほどフィールドに習熟しているはずですから、一年一度の私が考え付く程度の問題は解消されている事と思います。

山全般そうですが、【人任せ】ではいけませんよ。
雲竜渓谷・雲竜瀑に至っては、猶の事。
あなたの身を守るのは、あなたの責任であり、あなたの危機意識です。

雲竜瀑へのルート地図も起こしたのですが、やはり地図は掲載しない事にします。

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友人グループが雲竜に入ったので、コースタイムを追記。
《往路》
林道入口出発(7:35)→稲荷川展望台(8:20)→洞門岩(8:50)→沢沿いから林道終点(9:30)→友不知(10:00)→雲竜瀑直下(10:30) 【175分】

《復路》
雲竜瀑直下(10:45)→昼食など→林道終点(12:00)→林道経由で洞門(12:49)→稲荷川展望台(13:08)→林道入口帰着(13:50) 【昼食を45分程度とし、140分】

往復の移動に【5時間15分】
今回は、リーダーを除いて冬山に登るほどではないにしても単独での冬季活動を行える、平均年齢30歳弱の男女5人。
メンバーから考えると、一般的なハイカーが彼ら以上のタイムで歩く事は難しいでしょう。

つまり、5時間以下のツアーは、成立させるための『何か』を必要としているはずです。

(2011/02/08_22:15 二重線以下コースタイム追記)